子育てを最適化するには(その2):育児スキルを使う

このブログ記事シリーズでは「子供とゲームやテレビのルールを決めてもなかなか守れなくて、自分自身も仕事や家事で忙しいのでどうしたらいいのでしょうか」というご質問にお答えする形でお話しています。

前回の記事で、この問題には最適化の発想でアプローチできるということ、そのためにはまず何を実現させたいかという目的をはっきりさせること、時間やお金といった使えるリソースを明らかにすること、情報を上手に使うこと、というお話をしました。

今回は、どのように実際に子供に対して実践していくか、ということについてお話しします。1つ目は、自分親自身が望むものは何かということに注意を向けるという意志の力、セルフコントロールを働かせること、2つ目はコミットさせるスキルこと、3つ目は子供に協力を促す育児スキルとはどういうものか、ということです。

自分が望むものに注意を向けるセルフコントロール

1つ目の、自分が望むものに注意を向けるセルフコントロールとは何でしょうか。これは、アメリカの児童心理学者バイリ―博士が提唱しているもので、自分の欲しないものではなくて、欲するものに注意をむけるという意思の力、セルフコントロールです。

私たちは常日頃、「これが嫌だ」「これが望ましくない」ということに注意を向けがちです。親は、子供に躾をしようとして、「テーブルに上ってはいけません」、「食事中に歩き回ってはいけない」、「物を乱暴に扱ってはいけない」、「ビデオゲームばかりしているのはダメだ」などと、望ましくないものに注意を向けることが多いです。

ところが、欲しないことに注意を向けてばかりいると、結果としてそれが実現してしまうという経験はありませんか。例えば「テーブルに乗らないで」と言うと子供は、逆にテーブルに乗ってしまうということがよくあります。子供に「やめろ」と親がいうと子供は余計にそれをしてしまうという児童心理学に基づく事実は、多くの親が実際に経験していることです。

そこで重要なのは、まず親自身が何をしたいかということを明らかにすることです。テレビを見すぎるのは良くないのであれば、テレビを見る代わりに子供に何をして欲しいのでしょうか。それをまず考えてみて、欲することに注意を向けましょう。

そのためには、自分が仕事をしてる間にテレビやゲームをあまりするのではなくて他の活動をさせたい場合、どのような実現可能な活動があるのかを考えることです。

子供にコミットさせるスキル

2つ目は、子供にコミットさせるというスキルです。何かと言いますと、親が選択肢を与えるなりして子供にあえて選ばせるということです。これはどのように実行可能かと言いますと、このテレビの例では、親が「もうテレビ終わる時間だよ(約束の時間は過ぎているよ)」と言って、「この後で、本を読むの?それともレゴで遊ぶの?あなたが決めてね」ときっぱり言うことです。

特に小さなお子さんでしたら 、とにかく選択肢があると決めやすいですし、子供自身が決めた、つまりコミットしたという意識があるのでスムーズに行きやすいです。

協力を促す育児スキル

3つ目は、子供に協力を促す育児スキルです。子供がテレビをやゲームの約束を守らないといった時に親がやりがちなことは、子供を責めたり、子供に対して「あなたは約束を守らない人だ」などとレッテルを貼ったり、「約束を守らないからお小遣いを減らす」などと脅したり、命令口調になって怒鳴ったり、 約束を守らないことについての道徳的な説教を垂れたりする、ということです。

こうした行為は全て、「子供は親に反抗的で、子供に正しい行いをさせなければならない」という前提に立っています。実は、そういった前提を持ってしまうことは逆効果で、子供が一層親に協力的でなくなることがあります。

そこで、子供に協力を促すには、まずは、子供の良いところを見ることです。例えば、子供にとってあまりにもゲームやテレビが面白かったので時間を忘れてしまったのかもしれません。私達だって何かに熱中してる時には時間を忘れてしまうものです。ここで重要なのは、子供の行為が、親への裏切りや反逆ではなく、子供は親に逆らおうとする意図はなかったと察することです。

そして、子供の良いところを見たうえで、協力を促すようなスキルを使うことです。それはどんな育児スキルでしょうか。

世界中で30年以上読まれている育児書のベストセラー「How to talk so kids will listen」の著者FaberとMazlishが、とても役に立つ「協力を促すためのスキル」を提唱しています。

まず、①事実を描写することです。例えば、「もうテレビ(ゲーム)の時間が過ぎているよ」と言います。それでも思うような結果が得られない時、②情報を簡潔に提供することです。例えば、「ゲームをやりすぎてしまうと、夕食が遅れてしまったり夜遅くまでおきていたりして、明日寝坊してしまうかもしれないよ」ということです。就学期のお子さんなら、「時間だよ」などの一言リマインダーも効果的です。それでも効かないなら、③親の気持ちや立場を説明することです。例えば、「あなたがゲームの時間をきちんと守ってくれると、皆で早い時間に食事ができて、食事の後片付けも早くに終わらせることができるし、ママはとても助かるよ」などです。

このように、自分の欲することに注意を向け、子供にコミットさせ、子供に協力を促す、というのが、冒頭のテレビ(ゲーム)のシチュエーションで効果を発揮すると思います。今までのあなたのアプローチがこれとは異なったものなら、最初は、親自身も子供も慣れなかったりして中々うまく行かないこともあるかもしれません。どんなことでも、新しいことをする時は、最初はうまく行かないものですが、何度も行ううちに出来るようになるものです。

解決しないときには

ただ、子育ては一筋縄には行かないことが多く、これでは解決しないこともあります。実際、育児書通りにはならないというのは多くの親御さんの悩みどころです。その場合、方法や選択肢をもっと増やして、解決策を探ることです。

次のブログ記事で、より広範な解決策を探る方法についてお話しします。