どう変わる?世界的なオンライン教育・ハイテク教育が創り出す未来

2020年のコロナ感染拡大をきっかけとした世界規模でのオンライン教育の流れが、AI(人工知能)といった最新のテクノロジーと共に、子供のその後の人生や教育、ひいては社会のあり方をどう変えるのでしょうか。

ここでは、特に小学校から高校までの教育に焦点を当てて、オンラインスクーリングやオンラインを使った学習と教育、今後の社会がどうなるかについてお話しします。(大学や大学院など高等教育のオンラインのあり方は大きく異なるので、ここではあくまで小学校から高校くらいまでのお話しです)

日本では義務教育課程のオンラインスクールは、コロナ感染により3月頃に学校が休校になったころに一部の学校で行われていたものの、全体としてみてオンラインスクーリング自体の実施率は低かったと聞いています。

しかし、世界的に見ると、アメリカをはじめ、オンラインスクーリングが行われている国・地域もまだ多いです。

例えば、私が在住しているヨルダンではコロナ感染拡大増加のため、全ての学校教育が基本的にオンラインになりました。

私の息子のクラスではGoogle Meetを使うオンラインミーティングは大体15%位を占めて、残りは先生からのビデオによるインストラクションを提供したり、教育ビデオ等や学習ゲームを通じて生徒が自主的に学んだり、その他、自主学習として外で自然探索したり本を読んだり「機械を作る」といった課題もあります。

息子はイギリス系のインターナショナルスクールに行っているため、すべてのインストラクションは英語で行うわれていて、英語での学習ゲーム、アプリ、教育ソフト、ビデオの多様さや数の多さレベルには非常に驚かされます。

実は、コロナの前から、オンライン学習の素地はかなりできていました。教育関係のアプリや教育ソフトウェアが英語圏では充実していましたし、教育現場でも実際に使われていました。

ただそれがコロナによって否応なく多くの学校がオンラインスクールになってしまったことで、その進化のスピードはずいぶん早くなりました。オンライン教育ソフトやアプリの数も飛躍的に増えました。

オンラインの学習と言うのは、メリットとデメリットがあり、また、それに合う年齢とそうではない年齢層もあります。さらに、オンライン学習にうまく適応できる家庭環境にある子供とそうでない子供がいます。

それでも、オンライン学習が飛躍的にすすむ国や地域とそうでない国や地域とでは、将来的に大きな差が出てきます。

世界的なオンライン教育の流れはコロナの一時期だけではなく、つまり、ワクチンが世界中で普及すれば元に戻るというものではなく、少なくとも数年間に及ぶ中長期的な影響も出てきます。

オンライン・テクノロジーを持ちた教育の良いところ

では、Ed Tech(エジュケーション・テクノロジー)と呼ばれるオンラインやテクノロジーを用いた教育の良いところはどんなところでしょうか。

1.子供の得意・不得意や進捗に合わせた学習

1つ目は、子供のペースや個々の子供の得意・不得意に合わせた学習が可能なことです。

様々な研究成果やエビデンスから、どのように学ぶ(読んで学ぶか、見て聴いて学ぶか、感覚的に学ぶか)のが最も効果的かは個々人で全く違っていて、また、学ぶ速度・ペースも興味関心も個人個人で異なるということが証明されています。

ですので、30~40人のクラスに、あるいは15人程度の少人数のクラスであっても、先生が一人いて、一斉に指示を出し子供に学ばせるというスタイルで個々の子供のポテンシャルを最大に引き出すのは、どんなに優秀な先生でもほぼ不可能なのです。

そこで、オンラインや教育ソフトウェアといったテクノロジーを使うことによって、個々の子供に合った学びの環境を創り出すことができます。

2.質の高い教育・教師を多くの子供へ

2つ目は、質の高い教育を多くの子供がシェアできるということです。

多くの方が、子供の頃に特定の先生との出会いによって能力を開花したり、歴史や科学など特定の分野への興味関心を引き出せたという経験があるのではないかと思います。しかし、残念ながら、そういった先生に恵まれず、能力や興味関心を開花できない子供もいます。また、どんなに優れた先生でも、オールマイティに全てのことができるわけではありません。

そこで、テクノロジーを用いることによって、質の高い先生や教えを多くの子供でシェアすることができます。

特に、創造性、問題解決能力、分析的思考といった、「21世紀型スキル」と呼ばれる、これからの世の中で必要とされるような、従来の学力テストなどでは測ることが出来ないスキルを教えると言うのは、大教室で一斉授業をする伝統的な教育形態でできないこともあります。

そこで、テクノロジーを用いることによってこういったスキルを子供に効果的に教えることができます。実際、数多くの教育テクノロジー分野で、そういった「21世紀型スキル」を授けるようなソフトウェア開発が進んでいます。

3.先生にとっても恩恵が沢山

3つ目は、教師がより高度で有益なことに集中できることです。

テクノロジーを使って子供の理解度や進捗状、得意不得意をコンピュータでタイムリーに集計することができます。従来の紙ベースの試験ではタイムリーに先生が把握できなかったり先生の手間がかかっていました。

そこで、テクノロジー導入により、先生はより高度なこと(例えば子供への情緒面でのサポートや、進捗度に応じた対応)に集中することができます。

このように、オンラインやテクノロジーを用いた教育の利点や可能性は無限に広がる一方で、問題点もあります。

特に、アメリカなど既に教育現場にオンラインやテクノロジーを取り入れてきた国では、既に問題点が出てきていて、学校や地域によっては、それまでの方針を見直すところも出てきています。

次の記事では、オンラインやテクノロジーを用いた教育の問題点についてお話しします。