グローバル時代に知っておきたい、世界の宗教とイスラム教のこと

グローバルな時代の国際理解のために知っておきたい、世界で18億人いるイスラム教についての知識とは、どのようなものでしょうか。

昨日(2021年5月12日)まで、イスラム教ではラマダンと呼ばれる断食月が先月から続いていて、世界中で多くのイスラム教徒(ムスリム)が夜明けから日没まで食べ物や飲み物を口にしない断食を続けています。そのラマダンも終わり、今日(5月13日)からはイードと呼ばれるイスラム教の大きなお祭りが始まります。これはキリスト教でのクリスマスに相当するような、年に一度のビッグイベントです。イードは普通、数日間かけてお祝いします。

もしお知り合いにインドネシアなどのイスラム教国から来たムスリムの方がいらっしゃれば、「Happy Eid!」と言ってあげると、とても喜ばれるかもしれません。

私は現在ヨルダンというイスラム教国のアラブに住んでいることがあり、イスラム教ってどんな風なの?とよく質問されることがあります。 

そこで、今日は、グローバル時代に知っておきたいイスラム教の知識について、よく聞かれることに沿ってお話したいと思います。

Q. イスラム教って、どんな宗教?

今から1400年くらい前に、現在のサウジアラビアに住んでいたマホメットという男性が神の啓示を受けて始めたのがイスラム教の起源とされています。現在、イスラム教徒は18億人いるとされ、キリスト教に次いで2番目に大きいです。イスラム教、キリスト教、ユダヤ教は一神教で、同じ神を崇めている、いわば兄弟関係にあります。

ちなみに、イスラム教の聖典コーランには、旧約聖書に出てくるモーセやユーセフといった預言者や、キリスト教のイエスキリストや聖母マリアにつての記載があり、モーセもユーセフもイエスキリストも聖母マリアも、イスラム教では、神の啓示を受けた預言者(といっても、一人の人間)ということになっています。

他方、キリスト教の世界ではイエス・キリストは神の息子であり、キリスト教徒からみると「神の息子たるイエスキリストを、『単なる預言者』呼ばわりするとは何事だ!」という反応だったそうです。(この辺は、井筒俊彦著「マホメット」講談社学術文庫に詳しく書かれています。)

イスラム教は本来は平和を尊び、その教えていることは、基本的には、「親を敬え」、「嘘をつくな」、「神を信じろ」、「孤児など弱いものにはやさしくせよ」といった、日本にもあるような昔ながらの道徳に近いです。

Q. イスラム教徒は皆アラブの人で、アラビア語を話すの?

イスラム教は実は世界の様々な国・地域にいて、アジアに最も多くのイスラム教徒が住んでいます。インドネシア、インド、マレーシア、パキスタン、カザフスタンなどの中央アジアなどが多くのイスラム教徒を擁しています。中東アラブ諸国に住みアラビア語を話すイスラム教徒は全体の20%です。ですので、大半のイスラム教徒はアラビア語を話しません。

アジアや中東以外でイスラム教が多数を占める国には、アフリカのほか、ヨーロッパでも、コソボやアルバニアなどがあります。フランスや英国ではイスラム教徒はマイノリティーではありますが、旧植民地時代の名残で比較的多くのイスラム教徒がいます(フランスでは、人口の8.8%がイスラム教徒)。ワールドカップなどでフランス代表選手をみるとイスラム教の選手が毎年複数います。

こちらのページから、国別のイスラム教徒の数が見られます。https://en.wikipedia.org/wiki/Islam_by_country

また、血縁を重んじるユダヤ教などとは異なり、誰でも簡単にイスラム教徒に改宗できることから、改宗によってムスリムになる人もいます。

Q. 有名なイスラム教徒は誰?

フランスのサッカー選手(現・レアルマドリード監督)ジダンはアルジェリア系フランス人で、イスラム教徒です。

また、アメリカの伝説的なボクシング選手であるモハメッド・アリはイスラム教徒に改宗し、名前もイスラム教風に変えました。1960年代以降、多くの黒人アメリカ人が、彼らの先祖が奴隷としてアメリカに来る前には大半がイスラム教徒であったことから自分たちのルーツに回帰しようと、イスラム教徒になりました。モハメッド・アリもその一人でした。

比較的若手のセレブリティーでも、Dave Chappelle というアメリカ産まれの黒人アメリカ人コメディアンが90年代にイスラム教に改宗しています。

Q. イスラム教って、怖いイメージがあるけれど?

「過激派は、そのグループを代表しない」ということに尽きるかと思います。

例えば、2015年に人工中絶に反対するキリスト教過激派のアメリカ人が、プランド・ペアレントフッドという人工妊娠中絶手術や避妊薬処方を行っている団体を襲撃し、米政府によって「国内テロ」と認定されました。この人物のために「キリスト教はテロリストの宗教だ」とは言えないのと同様に、イスラム過激派の存在を基に「イスラム教はテロリストの宗教だ」ということは言えないです。

(その襲撃事件については、こちらのページに詳しく書かれています:https://en.wikipedia.org/wiki/Colorado_Springs_Planned_Parenthood_shooting

歴史的に言うと、その名のもとに最も多くの人を殺戮してきた宗教は、キリスト教です。スペインによるインカ帝国などラテンアメリカ征服・先住民の虐殺に際してキリスト教が決定的な役割を担いましたし、ローマ教皇みずからが主導した十字軍遠征によって何万人ものイスラム教徒が殺害されました。

(こちらのページに、詳しく書かれています:https://en.wikipedia.org/wiki/Christianity_and_violence#Inquisition

しかし、だからと言ってキリスト教が「危険な宗教」であるということはなく、キリスト教の実際の教えは極めて平和的です。

また、日本の神道の現人神であった天皇の名のもとに太平洋戦争が行われアジアで多くの人が犠牲になりました。

しかし、だからといって神道が「危険な宗教」ということはなく、神道は、本来は包容力があり平和を尊ぶものです。

同様に、イスラム教についても、18億人のうち一握りの「過激派」とされる人がテロなど残虐な許しがたい行為を行ったとしても、彼らがイスラム教を代表していると考えるのは正しいでしょうか。

「百聞は一見に如かず」で、インドネシアやバングラデッシュなどから日本に来ている留学生、旅行者、労働者に接して、彼らの謙虚さや優しさに驚く日本人も多いのではないでしょうか。

さて、これを読んでどう思われましたか。世界で18億人いるイスラム教徒(ムスリム)を公平な観点から理解することが、よりグローバルな世界観を身に着けるのに繋がると私は思います。

(この記事は、メルマガ用に2021年5月に執筆したものです)