世界が違って見える!違うことではなく同じことに注目すると

この間、私と何もかも違うように見えた女性(ブルカと呼ばれるヴェールをまとったアラブの女性)を見かけて、私の中での多様性や人と同じこと・違うことについてのパラダイムが変わるような体験をしました。

私が住むヨルダンの首都アンマンの夏のたそがれ時のことです。私は夫と子供とでアウトドア型高級ショッピングモールの中の小洒落たカフェのテラス席に座っていました。 そこはフランス料理を出す店で、料理の質は良いのですが長く待たせることで有名な店でもあります。注文を済ませて料理を待っている間、私はぼんやりと道行く人たちを見てみました。

夏のヨルダンには近隣諸国から観光客が多く来ます。特に、サウジアラビアやクウェートといった湾岸諸国は夏は酷暑なので、標高1000mにある過ごしやすいアンマンにやってくるのです。アンマンは治安が良く、観光客やエクスパット(駐在外国人)向けのショッピングモールもたくさんあります。

私がいたアウトドア型モールにも、湾岸諸国からの裕福なアラブ人がたくさん来ていました。アンマンは日中は暑いのですが、夕方になると過ごしやすくなるので、沢山の人が夕暮れ時に外に出始めます。たそがれ時のそのモールは、ヨルダン人家族や観光客などでにぎわっていました。

ブルカを着た女性

そのなかで、「ブルカ」と呼ばれる、目を除くほぼ全身をヴェールで隠すような服装をしている、湾岸諸国から観光で来たと思われる女性がちらほらいました。子沢山のアラブ人家庭らしく、子供を4-5人連れている女性もめずらしくありません。

ブルカというのは非常に保守的なイスラム教女性が、家族以外の男性の前で着るものです。アラブのイスラム教の女性も多種多様で、キャリアを追求しているような女性はブルカもヒジャブ(顔は出して、頭だけをスカーフで覆うスタイル)も着ていません。ブルカを着ている女性は全体で見るとごく少数でイスラム教のなかでも非常に保守的で、キャリアを追求することなく若くして結婚し家庭に入る人がほとんどです。

私は、ブルカを着ている女性を見て、

「ああ、私とはずいぶん違う人だなぁ、あの人達と私が会話をすることすら無いだろうな」

と思いました。

ですが、次の瞬間、私は、

「でも、私もあの女性たちも、今この瞬間にこのモールにいて、美しい夕暮れを家族と共に楽しんでいる。そう考えると、私も彼女たちも同じなんだ」

と思いました。

よく見ると、彼女たちは、真っ黒なブルカの中から、化粧してふち取られた中東風の美しい大きな目をのぞかせ、おしゃれなバッグを持ってきれいな靴をはいて、楽しそうに子供や旦那さんと話していました。

私も、その日は久々の外食だったのでお化粧しておしゃれして、一番気に入っているイヤリングもしていました。

ますます共通点がみつかってきました。

何に着目すると「同じ」なのか

国籍や人種、着ているもの、キャリアや仕事といった「わかりやすい属性」だけをみると私とブルカを着た女性たちは随分違います。しかし、家族と共に夕暮れ時を楽しみたいとか、お洒落したい、といった価値観をみると、私とその女性たちは同じなのです。

「自分とは違う」ことではなく、「同じ」ことに注目すると、全く別の見方ができるし、色んな人と親近感が持てる、何よりも、「多様性」を心から楽しむことが出来ると気づいた、パラダイムが変わるような衝撃でした。

同時に、人種や国籍といった目に見えやすいは違っても価値観や特技といった点では同じだと考えることができると、世界中の多くの様々なバックグラウンドを持つ人とつながれる気がして、ワクワクしてきました。こういうふうに考えると、世界も違って見えてきます。

実は、多様性を考える上で、違うこと・異質性ではなく同じこと・同質性に着目することがポイントです。そのことは、近年の研究成果などから明らかになってきています。

次回の記事で、多様性の考えを、日常や社会生活にどう活かすかについて書きたいと思います。