子供のレジリエンスを高めるために その2:失敗から学ばせる

前回に引き続き、子供が自分自身のレジリエンスを高めるために親が出来ることは何かということについてお話しします。親がどのような働きかけをすれば、子供がストレスや失敗やトラウマから回復でき、さらに子供が進んでリスクを取ったりチャレンジに立ち向かうという選択をするようになるのでしょうか。

この記事では、子供が失敗や経験から学ぶ機会を与えるということについてお話しします。

なぜ子供が失敗から学ばせる必要があるのでしょうか。子供は経験を通じて様々なことを学びます。子供の失敗は多くの場合、子供の未熟な判断から来ていて、子供は失敗や成功と言った試行錯誤を通じて、より良い判断をできるようになります。この過程で子供のレジリエンスも高まります。

では、親が出来ることは何でしょうか。

1.過保護になりすぎないこと

親は特に子供が小さいうちは、子供を危険な目に合わせまいとか、怪我をさせたら大変だと思うあまり、過保護になりがちです。例えば、公園など親子連れがたくさんいる場所で、親が「気を付けて!」、「あぶないよ!」と言った言葉を連発するシーンを見たことはありませんか。

私はアメリカにいた時、私の子供が通っていた幼稚園で教諭のアシスタントをして幼児教育に関わってきました。

その幼稚園は自然との関わりを重視し、週に一度、朝から終わりの時間までずっと森の中で過ごす野外学級の日がありました。雨だろうが雪だろうが野外学級を開催し、自然の中で子供の発達を育むことを目指していました。

私がアシスタントとして働く際にその幼稚園の園長から言われたのは、野外で子供達に対して「気を付けて(Be careful!)」と言わないということでした。なぜかと言いますと、大人が「気を付けて」と言ってしまうと、子供達が自分で危険を感じ取り行動するができなくなるからです。

「気を付けて」と言わないというのは、森の中での野外学級を自然の中で子供達自身が自律的に考えて行動することを促すためでしたす。(もちろん、本当に危険な時や大けがをしそうなときには、大人が介入しますが。)

子供は、石につまづいて転んでしまうかもしれません。そうすると、次はどのようにすれば転ばないで他の同級生よりも早く丘を登れるかということを考えます。

このように、子供の自立心を養い、失敗も含めた経験をさせ、自分で考え行動させるということは、幼少から子供のレジリエンスを高めることにつながります。

2.子供に、失敗や未熟な選択から学ばせる

私たち大人は物事の因果関係(例えば、我がままを言い続けると人間関係も悪化する、など)を長年の経験から学んでいますし論理的な思考力もあるので、ある程度成熟した選択や決断をすることが出来ます。

しかし、子供は、成熟した決断や選択をするために必要な能力や経験をまだ十分に獲得していません。そこで親ができることは、子供自身に考えさせ経験させる機会を与えることです。

例えば、子供が宿題をやらないとか勉強をしないといった場合、親は子供が悪い成績を取ってしまうという「失敗」を避けるために先回りして宿題をやらせようとしたり勉強させようとしがちです。子供にとっては、遊んだりゲームをすることが勉強よりも格段に魅力的な選択肢なのですから、無理もありません。そして、子供が勉強に専念しない結果として子供が悪い成績を取ってしまった場合、親は「だから私が言ったでしょ!」とつい言いたくなります。

「だから私が言ったでしょ!」という言葉は、子供に対してどんなメッセージを発するのでしょうか。

それは、「私(親)は常に正しく私の言うことを聞いていれば間違いはない。だから、私の言う通りにしなさい」ということです。

そうしてしまうと、子供が失敗から学ぶことができなくなり、結果としてレジリエンスを高められる機会も失われてしまいます。

ではどうすればいいのでしょうか。アメリカの児童心理学者Becky Bailey博士によると、「子供から子供が失敗から学ぶことができるそういう力持っていると信じるという自己コントロールの力を保つこと」です。そうすると、親は、「危ない,気を付けて!」とか「だから私が言ったでしょ!」という言葉を発する衝動を抑えることができます。

その上で、親が出来ることは、子供にガイダンスを与えること(例えば、「宿題をしないと成績が悪くなるよ」など)と、見守ること(親のガイダンスにもかかわらず子供が宿題をせず悪い成績を取ってしまっても、「ほら見たことか!」「私が言ったでしょ!」などとは言わない)、失敗することにより子供が抱く悔しさといった感情に共感を示す、その上で、どうすれば良いかを子供と一緒に考える、ということです。(Bailey博士より)

このように、子供は自律的な判断、選択や行動から学ぶことができ、仮に失敗したとしても、その過程でレジリエンスが高まります。そのために親が出来ることは、①過保護になりすぎないこと、②子供自身の未熟な選択や失敗から学ぶ機会を与える、ということです。

「失敗から学ばせる」ということを行うには、親自身に忍耐力や自己コントロールが必要となることもあり、「自分の子供はこの経験から学んで一層成長できる」という信念を持っていなければいけません。それは、親にとっても学びのプロセスです。