日本が海外で持つ「形の無い資産」

私が海外に在住したり国際機関を通じて途上国や新興国と関わってきたなかで、そういった国で日本が尊敬され感謝され、日本という国のプレゼンス・存在感の大きさを感じてきました。

日本が特に新興国や発展途上国でとても尊敬され感謝されている理由の1つは、日本がそういった国に対して長い間、国際協力として多くの資金を充てて援助をしてきたことです。(その他、日本自体が戦後の貧しい状態から経済を発展させてきたことや、日本人の勤勉性、礼儀正しさといった理由もあります)

しかも、日本の国際援助は、相手国の利益や福祉に優先的に使われてきたことが多いです。実は、日本以外の他の国が海外支援をする際に、自国の企業や利益を最優先することも珍しくは無いのです。この点、日本の海外援助は、その国に必要なインフラを作ったり医療や福祉の面で支援したり、また、美術館や博物館やといった文化施設を提供してきました。

例えば、ヨルダンは非常に世界的に重要な遺産がたくさんある国ですが、残念ながらヨルダンだけではそういった歴史的な遺産を守るための資金を確保することは非常に難しいのです。それで、日本政府が協力して建設した美術館、博物館がヨルダン国内にいくつかありますが、そういった施設がヨルダンの世界的な遺産を守り継承するのに重要な役割を果たしています。

こういったことを通じて、日本人は日本は新興国や途上国で大きなプレゼンスを示し感謝され尊敬されてきました。

天然資源に乏しい日本にとっては、こういった形の「形のない資産(Intangible assets)」が貴重な資源の1つで、次世代にも受け継いでほしいものです。

ただ、残念ながら、新型コロナ感染が広がる以前から、日本は国際支援資金や難民への支援を大きく減らしてきました。緒方貞子さんといいう難民支援・国際支援について日本国内で絶大な影響力を持たれた方が昨年亡くなられたことも、国際支援資金・難民支援削減の背景の一つだと言われています。

新型コロナに伴う経済や日本の財政状況の悪化というのは最優先して取り組み課題ではありますが、それでも、日本が支援してきた途上国・新興国では新型コロナに伴う被害は日本よりもはるかに深刻です。

それでも、国際援助資金への予算を急に削ってしまうと、日本がこれまで築き上げてきた国際的な存在感が大きく薄れてゆき、日本が持つ「形のない資産」も同時に失われてゆきます。

新型コロナウイルス騒動が少しずつ収まってきた今、日本の国際支援のあり方や日本が築いてきた「形の無い資産」について思いを巡らせたいです。